佐藤 惠美子

投稿者

70代女性:一関市在住

想い出の場所

細浦駅と下大船渡駅の間の絶景
細浦駅と下大船渡駅の間の絶景での思い出

思い出

20代の私へ

三陸の小さな漁村で生まれたあなたの将来の夢は、専門職として経済的に自立して生きていくことだった。地元の高校を卒業し関東地方の専門学校へ進学が決まった時はとても嬉しかった。入学式には母親と二人で大船渡線の始発駅であるいう盛駅から一ノ関駅まで乗った。列車は海沿いの町をどんどん離れ内陸へと向かって走った。故郷を離れる不安と寂しさはあったがあなたは希望に胸を膨らませていた。それから帰省する度に大船渡線を利用していた。新幹線もなかった時代、東北本線から大船渡線に乗り継ぐと車内は懐かしい故郷の言葉であふれていた。車窓からの景色は新緑から紅葉そして雪景色へと季節ごとに楽しませてくれた。故郷の海が見える場所にさしかかる時の『ああやっと帰ってきた!』という安堵感は今でも心に残っている。細浦駅から下船渡駅の間の眼下に海が見えるちょっとゾクッとする絶景が大好きだった。4年間の学生生活を終えて無事に就職したのが気仙沼市(気仙沼駅)。その後大船渡市(盛駅)、大東町(摺沢駅)、一関市(一ノ関駅)とまさに大船渡線沿線の職場を行ったり来たりしていた。大船渡線のご利益があったのか、摺沢駅の近くの職場で働いていた時に最愛の伴侶に恵まれ現在に至っている。つらいことや苦しいこともあったけど今の私があるのは、大船渡線と共に生きてきた若いあなたが頑張ってきたおかげだよ。本当にありがとう。                ———70代の私から

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